執事ちゃんの恋
「コウ様のお姿があまりに麗しくて、こちらも感化されてしまったのでしょう」
「っ!!」
全身真っ赤かもしれない。洋服から見える肌は、すべて真っ赤。
コウは視線を泳がせながら、硬直したまま。
少しやりすぎてしまったか、と思ったヒヨリだったが兄であるヒナタはこれ以上のことを言ってのけただろう。
ヒナタは恥ずかしげもなくこういうセリフをのたまれるのだ。
とても血のつながりがあるとは思えない。
ヒヨリは、自分の兄であり双子のヒナタの顔を思い出し、こっそりとため息をついた。
まだ固まり続けているコウの手を取り、ヒヨリは瞳を細めた。
「さぁ、コウ様。そろそろ会場に戻りませんと」
「え? ……ええ、そうね」
コクコクとぜんまい仕掛けの人形のように頷いたコウは、ヒヨリに手をひかれてそのまま部屋をあとにする。
誰も乗っていないエレベーターに乗り込んだあと、コウはヒヨリに背を向けて呟いた。
「……ヒナタ」
「はい、なんでございましょうか。コウ様」
「貴方って……本当たちが悪いわよね」
「そうでございますか?」
「そうよ!」
コウはそっぽを向いたまま、ヒヨリに顔を見せずに天井を睨みつけた。
「そんなことばっかり言っていると、つけあがっちゃうんだからね!」
「構いませんよ?」
「っ!」
チンという音とともに、エレベーターの扉が開く。
ヒヨリは絶句しているコウの背中を優しく触れてエレベーターの外へと促す。