執事ちゃんの恋
第13話



 第13話



「健くん」


 今まで張り詰めていた糸がプツリと切れたように、いつもの、いつもどおりのコウがそこにはいた。

 その横顔は年相応のもので、先ほどまで見せていた『The お嬢様』という雰囲気は一気に払拭されてしまった。


 コウは、さすが名門文月家の長女だという威厳がある。

 だからこそ、今の今まで完璧なお嬢様を演じていられたのだ。


 それにここは言わば、コウにとってはある意味戦場といっても過言ではないはず。

 品定めされるような視線や、落としいれようとする輩、足の引っ張り合いをしようとするお嬢様方があちこちにいるこの誕生日パーティー会場という名の戦場。

 
 ここがどんなところなのかわかっていないコウではない。

 それは先ほどまでの振る舞いを見ていれば言わずとわかる。


 が、目の前のコウを見ると、ここはコウが気を許している屋敷内だったかと錯覚してしまうほどリラックスしている表情をしていた。



 ―――  いったい、これは……どういうこと?



 ヒヨリは、表情を極力変えないように努めながら、二人の成り行きを傍で見守ることにした。






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