執事ちゃんの恋





「私の叔父さま、文月健くんよ。健くん、こっちは私の執事のヒナタよ」


 コウの言葉で、ヒヨリは目を大きく見開いた。
 
 コウの叔父といえば、文月家当主の弟のことだろう。

 そういえば、とヒヨリは必死に考えを巡らせる。

 コウの父である、栄西には確かに年が少しだけ離れた弟がいる。

 家系図にも乗ってはいたのだが、名前は知らない。教えてもらっていないのだ。

 
 ――― でも、きっとお父様は知っていたんだわ。



 ヒヨリはこっそりと自分の父親の顔を思い出し、ため息をついた。

 この件については問いただす必要がありそうだ。

 ヒヨリはあとで宗徳に電話をしなければと決意をしながら、目の前にいる健に微笑んだ。

 
「お初にお目にかかります。コウ様の執事をしております、霧島と申します」

「噂はかねがね。文月にはあまり顔を出さない私にも届いておりますよ。コウに、見目麗しい執事がついたと。見目に伴うように仕事もできると兄上が誉めておいでだった」

「ありがとう存じます」


 背筋を伸ばし、少しだけ頭を下げる。

 挨拶をする二人をニコニコと笑顔で見つめていたコウだったが、今度はヒヨリの腕に纏わりついた。



「ね? 健くん。ヒナタ、とってもステキでしょ?」

「ええ、思わず裸体をスケッチしたくなる」

「んもー! 相変わらずなんだから、健くんは」


 クスクスといつものことだとばかりに笑うコウだが、ヒヨリは思わず健の言葉にギョッとした。


「ら、裸体って……」


 言葉をなくすヒヨリに、コウは茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべた。





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