執事ちゃんの恋
第14話
第14話
コウの誕生日パーティーは、これという問題もなく終わり内心ホッとした。
コウに対しての牽制などは、ちょこちょことあったが、そこは生粋のお嬢様のコウだ。
笑顔でかわす術を持っていた。
もちろんヒヨリも事前に頭に叩き込んでいた情報をフルに活用し、難を逃れることに成功。
お嬢様コウにとっても、執事ヒヨリにとってもまずまずの滑り出しだといってもいいだろう。
執事としてお嬢様のことを考えただけならパーティーはとりあえず及第点だった。
しかし、コウへの対応とは別のことで大変だったヒヨリは、そのときのことを思い出すたびにため息が出てきてしまう。
大好きで離れたくなかった人、健がヒヨリの前に突然現れたときにはどう対処していいのかわからなかった。
健の甘い言葉に甘い視線。
一瞬でヒナタからヒヨリに戻ってしまい、恋する女の子になってしまった。
「私を部屋に連れ込んだのはヒヨリですよ? なにもなく出て行くわけがないでしょう」
咄嗟に連れ込んだホテルの一室で、健は久しぶりにヒヨリにキスをした。
それも胸元に真っ赤な花を散らしていくことも忘れずに。
あのときのことを思い出すだけで胸の鼓動がうるさくなる。
ヒヨリは、自分の胸に手を置いた。
そして、すでに消えてしまったキスマークを思い出し、頬を赤く染める。