執事ちゃんの恋
「ちょっと眠るからお昼になったら起して」
「了解いたしました。おやすみなさいませ、コウさま」
ヒヨリがそう返事をすると、無言のまま小さく頷き部屋に入っていってしまった。
「一体、何があったのか」
どうやら女子高生も色々と大変らしい。
自分のときもそうだったな、とヒヨリは外の景色を見ながら思い出す。
友達とお泊り会も結構した。
パジャマ姿になりながらも寝ないで何時間もおしゃべりに花を咲かせたのは、数年前のことだ。
それなのに懐かしく感じる。
そこで話す内容といえば、さきほどのコウのように“恋の話”だ。
自分も健とのことを友達に相談しては、こけにされていたことを思い出す。
「ヒヨリはさぁ、オヤジ好みすぎるんだよ。アンタならもっと若くていい男がいっぱいいるよ?」
と散々言われていた。
確かに健とは歳がかけはなれているが、健の容姿はとても年齢差を感じさせないほど若々しい。
同年代の男なんて見向きもしなかった。
それは、今現在でも気持ちは変わらない。
ただ、ちょっと苦しいし、せつない。
気持ちが自分に向いていないとわかっていながらも会いたいと願ってしまう。
恋に溺れるとは自分のようなことをいうのだろう。
ヒヨリは自虐的に薄く笑った。