執事ちゃんの恋
「で、肝心のヒナタはどこ? 目星はついていないの? 霧島家の縁者とか、いろいろあるでしょ?」
「それがなぁ、ヒヨリ。どこを探してもいないのだ」
「い、いないって……」
「霧島家の縁者はもちろん、あちこち思い当たるところは全部調べさせたが……いない」
「ヒ、ヒナタ……」
ヒヨリはそのままペタンと畳に腰を下ろした。
霧島ヒナタは、ヒヨリの双子の兄だ。
もちろん双子ということで誕生日も一緒。もうすぐ一緒に20歳を迎える。
女のヒヨリは、誰と結婚するかは明かされてはいなかったが、婿養子を迎えることはすでに決定事項。
男のヒナタは本家の長男だ。
よってこれも生まれたときから文月家に執事として仕えることは決定事項だったはず。
霧島本家の長男は、20歳になったら文月家に執事として仕え、10年は文月家の内情を支えるということが決まっている。
だからこそ、ヒナタも例に漏れず厳しい勉学に励んできた。
ヒナタはヒヨリ同様、一緒にイギリス留学し、ヒヨリ少し遅れて先日卒業したばかり。
一足早く日本に戻ってきていたヒヨリは、ヒナタの卒業を喜んでいたところだったのに。
本人がいなくなるだなんて……。
唖然として宗徳を見つめるヒヨリに、2通の手紙を差し出した。
「なに、これ?」
「今日、ヒナタから届いた手紙だ。1通は私宛、もう1通はヒヨリ宛だ」
「……まずはこれを読んでもいい?」