執事ちゃんの恋
第18話
第18話
車から降り、辺りを見渡す。
さきほどからずっと健に抗議をしていたヒヨリは、興奮しすぎていて自分がどこにいるのかわからなかった。
小高な丘に鬱蒼と木々が根付き、そこだけ森林のような錯覚に落ちるような場所だった。
駐車場のすぐ隣には、高原のペンションのような丸太でできたログハウス。
玄関らしきところには小さな黒板があり、“喫茶 櫻”と書いてある。
健がヒヨリを連れてきた場所は、どうやら喫茶店らしい。
この中に健がヒヨリに会わせたいといっていた人物がいるのだろう。
「さぁ、ヒヨリ。こっちへおいで」
「あ……はい」
健に促されるままに、後ろをついていく。
チラリと木々の間から景色を見れば、遠くにキラキラと輝く海が見える。
どうやらヒヨリが健に抗議をしている間に、かなり遠くまで来ていたようだ。
「ほら、ヒヨリ」
「あ、はい」
再度、健に呼ばれてヒヨリは急いで店の入り口まで足を急かせた。
「どうぞ」
「ありがとう、健せんせ」
カラランという可愛らしいベルの音をたてながら扉を開き、健はヒヨリを店の中へと促した。
すると、すぐにカウンター越しにいた人物と視線が合った。
あご髭をたくわえ、クラシックなメガネをした初老がゆったりと笑う。