執事ちゃんの恋
「あなたがヒヨリさんね」
「あ、はい」
「初めまして。私、村岡美紗子といいます。よろしく」
「こちらこそ初めまして。……霧島ヒヨリといいます」
ペコリと頭を下げ、顔をあげると美紗子はヒヨリの顔をジッと見つめ、上から下まで舐めるように見ている。
居心地が悪くなったヒヨりは、美紗子に「あの……」と不審げに声をかけた。
するとやっと美紗子は我に返ったようで、バツが悪そうな笑みを浮かべた。
健はそんな二人を静かに見ていたが、美紗子の様子をみてクスクスとおかしそうに笑った。
「美紗子。そんなにヒヨリを見つめていたら、彼女が怖がってしまうよ」
「そ、そうよね。ごめんなさいね、ヒヨリさん」
「い、いえ……」
なんとなくぶしつけに見られたことに対して、美紗子に警戒心を抱く。
健はヒヨリと美紗子に座るように促したあと、美紗子の先ほどの態度について種明かしをした。
「美紗子にはね、今回の話を全部話したから」
「え?」
「ヒヨリがどうして男装をしているのかも、含めてね」
「た、健せんせ!?」
さすがに第三者にそんな重大なことをばらしてしまってはいかがなものか。
ヒヨリがギョッとして健をみると、ヒヨリの反応は予想どおりとばかりに健はほくそ笑む。
「すべてを知った人間がもう一人いないと今回の計画はうまくいかないと思ってね」
「で、でも!」
反論しようとするヒヨリに、健は笑いをひっこめて真剣な表情を浮かべる。