執事ちゃんの恋
第19話
第19話
「ねぇ、健せんせ」
「なんですか、ヒヨリ」
健はハンドルを握り、まっすぐ前を見ながら返事をする。
その横顔をジッと見つめたままで、そのあと言葉がないヒヨリに健は眉を顰めた。
「どうしたの、ヒヨリ」
「うん……」
そのあとも言葉が出てこないヒヨリに、ますます表情を険しくした健は、近くにあったコンビニの駐車場に車を停めた。
エンジンを切り、助手席に座るヒヨリの顔を見る。
「車に酔っちゃったかな? 気分が悪い?」
首を横に振るだけで、やはり返答がない。
健はヒヨリの顔を覗きこむ。
俯いたまま、膝のところで固く結ばれた手。
いつもの元気がないヒヨリを見て、健はますます心配になる。
「ヒヨリ?」
健が、もう一度ヒヨリに声をかけると、やっと顔をあげた。
しかし、その表情は憂いを帯びていて目が潤んでいる。
そっと労わるように、ヒヨリに触れようとするとそれを避けるようにヒヨリは顔を背けた。