執事ちゃんの恋




「やっぱり……ヒヨリは勘が鋭いですね。コウもなかなかのものですが……いやはや、お嬢様と執事、ふたりとも勘が鋭いとは、向うところ敵なしだな」

「からかわないでください!」


 ピシャリと言いのけるヒヨリに、健は困ったように肩を竦めた。


「困りましたね。ヒヨリに怒られると、どうしていいのかわかりません」

「健せんせ!! 私を子供だと思って、言い逃れようとしていませんか!?」


 ヒヨリの瞳からついに零れ落ちた涙を、健はソッと指で拭った。


「子供だなんて思っていませんよ?」

「嘘ばっかり!」


 真っ赤な瞳で睨むヒヨリに、健はおどけたように肩を竦める。


「思っていませんよ、心外ですね」

「心外?」

「ええ、心外です。子供だと思っている人に、あんな淫らなことしませんよ」

「っ!」


 今度は首まで真っ赤にして慌てるヒヨリに、健はわざと耳元で囁いた。


「ほら、したでしょう? あんなことや、こんなこと」

「た、た、健せんせ!」

「ヒヨリの身体、隅々まで知っているのは……私だけでしょう?」


 うー、と唸って視線を逸らすヒヨリに、健はフフッと笑う。


「ヒヨリは本当に可愛いですね」

「嘘つき! おもちゃにして遊んでいるくせに」

「まぁ……それは否定しませんが。でも、私が好きなのはヒヨリだけですよ?」

「嘘ばっかり! 健せんせの好きは、Likeのほうでしょ? Loveじゃないでしょ?」


 頬を膨らませて拗ねるヒヨリに、健はクスクスと笑うだけ。

 やっぱり心のうちを明かしてくれないと、ヒヨリは悔しくて唇を噛み締めた。





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