執事ちゃんの恋
第21話
第21話
「ヒヨリか?」
「……そうですよ?」
ヒヨリは美紗子に促されて健が待つ部屋へと行くと、ドレスアップした自分の姿を見て健は目を大きく見開いた。
なんともいえぬ沈黙が続き、ヒヨリも所在なさげだ。
そんな二人を見て、クスクスと笑いだしたのは美紗子だった。
「健さん。どうです? ガラリとイメージチェンジできたんじゃないかしら?」
「……ああ。どうみてもさっきまで男装をしていた子とは思えない」
「じゃあ、大成功ってことでいいかしら?」
「ああ」
「さっきから健さんってば、“ああ”しか言っていないわよ?」
「……ああ」
やっぱり“ああ”しか言っていない健に、思わずヒヨリは噴きだした。
バツが悪くなったのだろう。健は少しだけ口を尖らせて頭を掻いた。
「女は化粧や服で変わるっていうけど、ここまで変わると詐欺だよね」
「……健せんせ、それはかなり私のことをこけにしていませんか? 日ごろの私が悪すぎみたいに聞こえるんですが」
眉間に皺を寄せ、腕を組むヒヨリに健は豪快に笑った。