執事ちゃんの恋
「違うよ、ヒヨリ。日ごろは男前な執事をしているだろう。そんなヒヨリが女の格好をすると、やっぱり見違えるほどキレイだし女だなぁって再認識しただけ」
「っ!」
「どんな姿のヒヨリも可愛いけどね。私が選んだドレスを着たヒヨリは格別」
「健……せんせ」
「とってもキレイだよ。早く皆にみせびらかしに行きたいな」
「っ!」
慌てるヒヨリが面白いのか、健はわざとヒヨリが照れるようなことばかりを言う。
それを傍からみていた美紗子は、ツンとすまして健に忠告する。
「健さん、ヒヨリさんをからかって遊んでいる時間はあるのかしら?」
美紗子は自分の時計を指差したあと、扉に視線を向けた。
「確かに、美紗子の言うとおりだな。……ヒヨリ」
「は、はい!」
突然自分の前に差し出された手と、健の顔を交互に見比べる。
どうしていいのかわからずオドオドとした様子のヒヨリを見て、健はクスリと妖艶に笑った。
「さぁ、ヒヨリ」
「えっと……」
戸惑うヒヨリの手を、健は強引に掴んだ。
一瞬ビクリと身体を揺らしたヒヨリだが、咄嗟に気を引き締めた。
戦いはこれからだ。どっしりかまえていなければ、ヒヨリは自分に発破をかける。
グッと唇を結び、健を見上げた。