おおかみ男の娘
「じゃあ、今日から僕と椿ちゃんは仮の恋人って事で。ほらっ、部活行こっか?」
「うん…ごめんね。私なんかと…。」
少し申し訳なさそうな顔を僕に見せた。
「椿ちゃん…。」
僕はその笑顔のない椿ちゃんの手を
引き取ってアート室へ向かう。
「僕に任せてて…頼りないだろうけど、
君の為ならきっと何でも出来るから…。」
僕はきっと…椿ちゃんの為なら…。
「嬉龍くん…ありがとう…。」
静かに微笑んだ声が聞こえた。
僕も少しだけ笑った顔を彼女に向けた。
そして、僕達はアート室に着いた。
僕と椿ちゃんはせっせと絵を完成させていく。
「椿ちゃんは何の絵を書いてるのかな…。」
自分の絵を見てふと呟いた。
僕が書いた絵のタイトルは《大好きな人へ》。
綺麗な桃色の髪、優しくて美人で誰からも愛さ
れる椿ちゃんには見られてはいけない作品だ…。