おおかみ男の娘
私は嬉龍くんの手を引っ張って走った。
奴から逃げるために…。
きっと私の後を着けてるのはあの女……
間違いない、桐生院彩だ!!
「走ってくる…ここに向かって…。」
私は必死になっていた。
すると…
「椿ちゃんッ!!落ち着いて!!」
という声がかかった。
私はハッとして後ろを振り返った。
「嬉龍くん…。」
「椿ちゃんは僕に一体何を隠してるの?」
何を隠してるかって…あの日あの場所で
私の桃色の髪、狼の耳、胸に刺さった矢、
そして戦国の世に生きていた証の古い着物。
千年の呪いを途中で解いた嬉龍くんが
何を隠してるか何て一番知ってるでしょ!?
「あの女、部活体験の時、食ってしまえばよかった…。」
少し後悔している自分がいる。
「えっ…椿ちゃん?なんか言った?」
「ううん。何でもない。」