おおかみ男の娘
椿side
「はぁっ…はぁっ…。」
私は何故か走ってトイレに来た。
Maxスピードで走って、さすがに息が上がる。
でもトイレに来たのには特に意味はない。
ただ抱き締められた時、あの小さな嬉龍くんの
背中がとても大きいと…とても暖かいと感じた。
「はぁ…人間ってあんないい奴もいるんだ。」
私の母さんも実は言うと人間だった。
父さんは狼男。
完全な狼と言っていい人。
上手く人間に化けて人間をだまし、
人間を食って生きていた。
まさに獣だった。
ところが、父さんはある日、
人間に恋をしてしまった。
それが私の母さんだった。
2人はやがて結婚し、父さんは人間を
食わずして死んでしまったのだ。
「父さん…貴方が母に恋したから
私は完全な狼になれなかったんだ…。」
なのにどうして!?
ねぇ、どうして私はその悲劇を自分で
また繰り返そうとしているの?