おおかみ男の娘
「どうして…?」
そう自分に問いかけながら
顔を洗面所で冷やしていると…
「うわぁぁぁぁあ―――っ。」
という声がアート室の方から聞こえた。
この声は嬉龍くんだ!!
何?何があったの!?
その声はどんどん遠ざかっていく。
…人間の耳じゃここまでか。
「仕方ない。狼の耳を使おう!!」
私は自分の本来の耳を頭から
ひょこっと立てた。
すると…
『嬉龍くん、椿ちゃんと付き合ってるってのは本当かなぁ…?』
と微かに聞こえてきた男の声。
この声は間違いないっ!!
「健先輩だ!!それと美術部男子達。何この足音…めちゃくちゃ人がいる…。」
まずい…知らない人達の臭いがする。
他校の人を呼び込んだな!!
「とにかく行かなくちゃっ!!」
私は狼の耳をしまって、廊下に染みついた
嬉龍くん達の臭いをたどって走っていった。