おおかみ男の娘
「……きちゃん…。」
誰かの声が聞こえる…。
「椿…ちゃん!!」
いったい誰の声だろう…。
ポタポタと私の頬に雨を降らせて
なんて顔してるんだろうか…。
なんて顔で私を見つめているのだろうか。
「つ…ばきちゃん…目を…開けてよ…。」
彼の流す涙はポタポタと流れ落ちる。
「嬉龍くん…ご…めん…ね。」
「つ…椿ちゃん!!目が覚めたのっ…。」
「えぇ…。」
私はひょいっと起き上がった。
何故か嬉龍くんを寝かせたはずの
ベットに私が眠っていたのだ。
「僕のせいでこんな事に……
僕、君に何て言ったらいいのか…。」
嬉龍くんはボロボロになった
その痛々しい顔でずっと泣いていた。
これは本当は嬉龍くんのせいじゃないんだ。
私が健先輩をフッたせいだったんだ。
曖昧なこの関係だけど何故だか
嬉龍くんとじゃないと嫌だと思ったんだ。