おおかみ男の娘

「嬉龍くん…泣かないで。私はどこも怪我してないよ。だから…いつものように笑って…?」



そう言って笑ったけれど

嬉龍くんは泣きやむことはなかった。


そして優しく私を抱き締めて、


「君を危険な目にあわさない。君に何かあったらと思うと胸が張り裂けそうだ。」



とそっと呟いた。


彼は本当に何て人なんだろうか…。


本当にこんなにいい人がいたりすんだろうか…。



彼は自分の事より人の事ばっかりで

いつも真っ直ぐ私を見つめている。



真っ直ぐな心でいつもいつも包んでくれる。



「嬉龍くん…やっぱり貴方はいい人だ。
初めてあった日からずっといい人だ。」


「………椿ちゃん?」


「でも、私はやっぱりいい人にはなれない。
私はただ、嬉龍くんを利用してるだけ…。」



父さんを餓死させた人間の母さん。


正体を知られるのも時間の問題だ。



いつ、桐生院 彩が気が向いて私を

封印しに来るかも分からない。


「椿ちゃん…そんなの分かってたよ…。君みたいな綺麗な子が何で僕にそんなにこだわるのか理由がなかったから…。」


……嬉龍くん…やっぱり貴方は優しいね。


だから私は貴方にいつも甘えてしまう。

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