おおかみ男の娘
椿side
「…………嬉龍…くん…。」
嬉龍くんが私の前に飛び出して
矢が自分の胸に刺さってしまったのだ。
何度彼の名を呼んでも、
もう返事は返ってこない。
「………うわぁぁぁぁあっ!!」
どうしてこうなったんだよ…。
私が悪いんだよ?
何で…何で何もしてない嬉龍くんが…?
私はキッと桐生院彩を睨んだ。
「本当はあんたを1番に食ってやろうと思ってたのに…次会ったときは覚えてなさい!!」
そう言って私は嬉龍くんを抱きかかえて
窓から部屋を出た。
そんな私を桐生院彩はじっと見ていた。
「人間の感情をもつ狼か…。」
と最後に一言呟いて―――…。
私はそして走ったんだ。