おおかみ男の娘
嬉龍くんと初めてであったあの
千年桜の元へ行くために…。
私の涙は溢れて止まらなかった。
そんな中、やっとの思いで千年桜の元へと
たどり着くことができた。
「嬉龍くん…あの矢を胸に刺された
人間は死んじゃうんだよ…。怖いよね。」
私は千年桜の木陰に
嬉龍くんを寝かせて言った。
「辛かったよね…苦しかったよね…。嬉龍くんは誰より素敵な人なんだ。でも、私は…生きなくちゃいけないんだ。」
人間を食べないと生きていけない…。
それが狼男の娘として生まれた私の運命。
「ごめんね…嬉龍くん。」
私は振り返らずに千年桜から離れようとした。
が、しかし…
「つ…椿…ちゃん…。」
微かに弱々しい声が私の耳に入った。
「嬉龍くんっ!!」
その声に私は思わず振り返ってしまった。