冬が、きた。





次の日の朝早く、私は寝不足でぼんやりしながら大学へ向かった。


………家にいたら、だめな想像しか出てこない。


私はふらふらと大学の図書館に入っていって、本を読み始めた。


そうして、本をほぼ読み終わった頃。


「………雪音」


誰かが私の座っている椅子の横にしゃがんできた。


見ると、慎くんが心配そうな顔で私を見上げていた。


「慎くん……」


「こんなところで何してるの?体調は良くなったの?顔見せて」


慎くんは私の背中を撫でながら、私の首に手を当てる。


「熱は、大丈夫みたいだけど。やっぱり顔がおかしいよ。今日は僕の部屋で休んでて」


「慎くん、部活は……?」


「ああ、今は昼休憩。……全く、心配したんだからね?電話は出ないし、家にもいなかったし……」


………携帯。
昨日、家に帰ってから、一度も見ていないことに気づいた。


「………なんで、ここにいるって……?」


「え、そんなの、勘だよ。なんとなく雪音がいる気がしたから」


そう言って、慎くんは私の手を取って、立ち上がらせた。


「ほら、帰るよ」




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