冬が、きた。





私は涙をぐっとこらえながら、駅に向かって歩いた。


…………これから、どうしたら良いんだろう。


分からない。
分からないから距離を取った。


………でも、これからも分かる気がしない。


…………本当に、これで、良かったのかなあ。


クリスマスコンサートまで、あと二週間。


………少なくとも、慎くんはコンサートに向けて、集中出来るんじゃないかなあ。


ぼうっとしながら電車に乗る。


座席に座ると足元に、暖房の暖かい風が、もわっと当たった。


………気持ち悪い。


つい顔をしかめると、さっきの慎くんの表情が思い出された。


……慎くんのあんなに辛そうな表情、見たことない。


慎くんを傷つけてしまった。


…………怖い。


慎くんを信じられなくなってしまった、自分が怖い。


慎くんは、待ってるって言ったけど。


それに甘えて、心の整理がつかないまま、慎くんのところに帰っても、辛いだけだ。


……電車を降りると、電車の暖房で無理やり熱せられた体が急激に冷えていった。


切なくなりながら、思わず呟いた。


「………………さむい………」




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