冬が、きた。
私はうつむいて、唇をきゅっと噛み締めた。
………自覚はあった。
あの日以来、ずっと胸が重苦しくて、気分は晴れない。
何をしても楽しくなくて、作り笑いしかできなかった。
皆に心配されても、仕方ない。
「……ごめん。でも、大丈夫だから」
顔を上げて、無理やり笑いながらそう言うと、彼女はちらっと私を見て、また顔を背けた。
「……あたし、そんなバレバレの嘘信じるほど、素直じゃないし。……思ってもないこと言うぐらいなら、何も言わない方がマシ」
「…………」
また私はうつむいた。
すると彼女は、ボールをいじくっていた手を止めた。
「……雪音のさ、そうやって人に迷惑とか心配とか、かけないようにする癖はさ、良いところでもあり、悪いところでもあるよね」
彼女はぽつりと呟いた。
さっきとは打って変わって、
………優しい声。
彼女の横顔を盗み見ると、彼女も悲しそうに目を伏せていた。