冬が、きた。
「雪音は、優しくて、あたしもつい甘えてしまう……。でも雪音だって笑顔でいられない時は皆と同じようにあるんだから、甘えたい時は甘えないと、雪音の辛さが積もっていくだけになるよ?」
「…………」
「嫌な事は嫌だって言って良い。言ったらだめな相手もいるけど。でも、わがままを言っても許してくれる相手が、雪音には、いるでしょう?」
「……………」
「………今、誰の顔が思い浮かんだ?」
はっと息を飲む。
見透かされた気がした。
……………そんなの………。
……………慎くんに、決まってるじゃない………。
だけど、私………。
「…………ねえ」
「ん?」
「…………私って、役立たず?」
小さな声でそう言うと、彼女は少し怒ったような顔をした。
「…………そんなこと、考えたことない」
「え?」
「そんなこと、どうでもいいから、考えたことなんてない」
「え……」
私がぽかんとしている間に、彼女はスッと立ち上がり、バンバンと床にボールをつきながら行ってしまった。