冬が、きた。
………………。
私はカバンを肩にかけ、ゆっくりと立ち上がった。
体育館を横切り、出口へ向かう。
靴を履き替え外に出ると、楽器の音が校舎から聞こえてきた。
思わず立ち止まる。
………あの日から、一週間が経った。
もちろん、一度も連絡は取っていない。
………寂しくないと言えば、嘘になる。
でも………。
正直、自分がどうしたいのか、よく分からない。
慎くんのところに戻ったとして、私には何が出来るんだろう。
………そう考えた時、ふと気づいた。
………慎くんは、私に何をして欲しいだろう。
何をすれば、慎くんは喜んでくれるだろう。
………思いつかなかった。
慎くんが私にわがままを言ったことなんて無い。
慎くんは私に、何を求めているだろう。
慎くんは、何で私と付き合おうと思ったんだろう。
何で私を好きになったんだろう。
私より可愛い人や、賢い人や、気が利く人は、山ほどいるのに。
……どうして私だったんだろう。