冬が、きた。
『でも、コンサート、待ってるから………』
「うん……」
『じゃあ、そろそろ、休憩終わるから。……また、今度ね』
「……うん」
しかし、電話はなかなか切れなかった。
「………?」
慎くんを見上げると、じっと見つめられていた。
慎くんがゆっくり口を開く。
『………さっき、雪音、電話に出るか、迷ったよね』
「あ………」
………見られていた。
『……もし、出てもらえなかったらどうしようって、怖くなった。………でも、出てくれたってことは、まだ望みがあるって、思っても良いのかな………?』
「……………私………」
声が震えるのを、必死でこらえる。
「……慎くんのこと、嫌いになったわけじゃ、ない……」
すると、慎くんは泣きそうな顔で笑った。
『……早く帰って、暖かくするんだよ。………雪音は、寒がりさんだから……』
……電話が切れた。
そして、慎くんは窓から離れて、教室の奥へ歩いていった。