玲瓏
「衿哉…ともう一人、だれ?」

ドアを開けた人は目を丸くしてつぶやく。

見覚えがある黒髪…。

「昨日僕たちを見た子だよ…。
なぜか記憶があるんだ…。」

明るい金髪の言葉にハッとする黒髪。

昨日は暗かったから気づかなかったけど、二人とも肌が真っ白で端正な顔立ち、身長も高いし、みんながいうイケメンってやつだなぁ…。

それにしても、さっきから記憶がどうのこうのって、何の話をしてるんだろう?

「ねぇ、ジッとして…目を閉じてくれない?」

「え?」

「いいから早く。」

いきなり何を言い出すかと思えば…ジッとして目を閉じる?

なんでだろう…。

黒髪の人からの鋭い視線も感じるし…。

おでこに手を当てられるけど、言われたとおりジッとしておく。

いったい何してるんだろう…まさか顔にラクガキとか…?

それはないか…。

「目、開けていいよ。」

おでこから手を離されたと同時に目を開ける許可がでる。

目をぱっちりあけてまわりを見渡してみるけど、何も変わってない。

「あの、何かしましたか?」

素直にきいてみると、
「したさ。でも君にはきかないみたい…。」
と返事が返ってくる。

黒髪の人は相変わらず黙ったままで。

「きかないってどういう…?」

わけがわからずききかえしてみても、だれも答えない。

しばらくの沈黙のあと、明るい金髪が口を開く。

「君、名前は?」

「縷依…一ノ瀬 縷依ですけど…。」

「僕は、衿哉(えりや)。
で、あいつは白夜(びゃくや)。
よろしくね、縷依ちゃん。」

な、なんでいきなり自己紹介なんて…。

「君は、いったい何者?」

衿哉という人物が言い放った質問に、わたしは固まってしまう。

な、何者?
わたしは普通に人間で…一ノ瀬 縷依って名前もあって…。

困惑したまま動かないわたしの顔を見て衿哉さんは笑う。

「そっか、まずは僕らのことについて話さなきゃね。」

「ただの人間なんかに、話して大丈夫なのか?」

白夜という人が、少し怒るような口調で言う。

ただの人間って、わたしのこと?

「いいからいいからっ。
さ、適当に座って。」

衿哉さんはわたしの背中を部屋の中へぐいぐい押してくる。

思えばずっと玄関先で会話をしていたわたしたち。

案内され入ると、部屋の中は妙に綺麗で、生活感があまりなかった。

わたしはリビングの二人がけのソファの端っこに座る。

すごいフワフワしてる…絶対高いやつだなぁ、なんて思いながら向かい側の一人がけソファに座る衿哉さんを見る。
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