残り5センチ
拓海にやっと想いを伝えようとした時だった。
教室の扉が開いて、誰かが入ってきた。
「あれ、拓海くん?」
「え?」
「あ、有紗」
拓海が「有紗」と呼んだ女の子は、クラスメイトの子だった。
「あ、柑奈ちゃんもいたんだ。
何してるの?
二人して…」
笑って可愛く首をかしげる有紗だったが、なぜか目は笑っていなかった。
「柑奈の補習を手伝ってたんだよ。
そういう有紗こそ何でまだ学校にいるんだ?」
有紗の側に言って話す拓海は私が見たこともない笑顔をしていた。
「私?
私は拓海くんを待ってたに決まってるじゃない!」
ギュッと拓海の腕に巻きつく有紗。
でもそれを嫌がろうとしない拓海。
私の心臓は飛び跳ねるようにドクンッと大きく鳴った。
「拓…海…?」
「あ、柑奈にはまだ言ってなかったよな…」
「私たち、付き合うことになったの!」
「え…」
突然投げられる現実。
「いつから…」
「…昨日から…」
ウソ…。
私の頭の中は真っ白になっていた。