空ノ向コウ
「お母さん!歌ってるの?あの人達の歌?」
『・・・ッ』
声にならない声で返事をする母。
ここで私は母が喋らないのではなく、喋れないという事に気づいた。
動けない為、水も父が飲ませている。
その光景はとても受け入れがたいもので、
私と姉はトイレへ行くと言って病室を出た、そして声を殺して泣いた。
病室に戻ってからは普通に、今まで通りに接した。
それでもやっぱり悲しさは消えなかった。
そして病室を後にした。
「またおうち帰ってきてね」
母は何も言わなかった。