キラリ
「じゃあ、プロのピアニストになるの?」


「どうしよっかな。

まだわかんない」


千明のその一言が、無性にイラッとした。



地味でぱっとしないけど

千明は私と違って変な病気じゃないから、社会に出る事も結婚する事も出来る。



私の肋骨の“歯”は、あれからも増殖を続けていた。


右の脇腹はもうほとんど“歯”に覆い尽くされてしまっている。


これから背中の方にも広がって行くのだろうけど

幸い、薄着になる夏と違い、ブレザーやカーディガンを着てしまえば“歯”の突起は完全に隠せる。


今が冬で本当に良かったと思う。
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