インターバル

寿命−10年?



今の状況を簡単に説明しろと言われたら私は【驚愕】と答える。


……これでは説明になっていないが、これ以外にあらわす言葉があれば是非とも教えて欲しい。


彼……玖成に招待されて入った建物の中は想像していたほど古くなく、むしろ手入れが行き届いていて綺麗だった。


キョロキョロしながら歩く廊下。


時々、猫や犬、ネズミなんかに邪魔されながらたどり着いたのは、何やら騒がしい部屋の前。

スパンッと玖成が障子をあけると一気に静かになった。


「“私の”客だ。しばらくの間ここにいるだろうから、仲良くしてやってくれ。」


『(犬、猫、ネズミ、蛇、亀、それとあれは……コウモリ?ど、動物園か、ここは!!)』


少しの間をおいて猫が鳴いた。それを合図に再び騒ぎだす動物たち。

数ひきの犬が私の方へ来たかと思うと、後ろから押され、カバンを引っ張られ、どうやら中へ招いているらしい。


『え、っと、ちょ、く、玖成さん!』


「大丈夫だ。こいつを部屋に置いて来たらすぐ戻ってくる。」


そう言ったかと思うと、猫に障子を閉められた。……ここの動物たち、頭良すぎじゃないだろうか。

どうすることも出来ずただ立ち尽くしていると、今まで騒いでいた部屋の真ん中から、サッと動物達がのき、丸くスペースがあく。そして猫が鳴いた。


『えっと、そこに座れ……ってこと?』


「にゃあ!」


『あ、はぁ……じゃあ、お言葉に甘えて……。』


そこへ座ると感じる視線。動物の視線も感じるんだなとのんきに思っていた時、1匹の猫がすりよって来た。


『わ、真っ白!かわいい!』


ひょいっと持ち上げ、膝の上にのせて撫でる。ゴロゴロと気持ちよさそうに目を閉じている。

少しの間そうしていると、その猫は膝の上から降りて私の前に上品座り、尻尾をゆらゆらと揺らした。

〈あたしの名前は早雪(サユキ)!あなたのお名前は?〉


…………聞き間違いだ。絶対に聞き間違い。猫が喋るなんてそんなことあるわけがn〈ねぇねぇ!お名前なんていうの?〉……聞き間違いじゃなかった。


そんなバカな。いつから私は動物の言葉がわかるようになったのだ。ドリトル先生でもあるまいし。

……わかった!これは夢だ!そうだ、どうして最初に疑わなかったんだろう!きっとほっぺをつねると目が覚めるはず……っ痛いっ!

強くつねりすぎた、痛い……。


〈お名前は〜?〉

〈猫が人間にしゃべりかけてもびっくりするだけなんじゃねーの?〉

〈えー、じゃあ変化する!〉

〈おいっ!それは余計にだめだろ!〉

〈じゃあどうしたらいいのよー!〉


犬と猫がしゃべってる。あぁ、目眩がしてきた……。

〈もう!変化するもん!〉


〈〈〈だめだって!〉〉〉


ポンッという音と共に現れたのは銀髪で真っ白の猫耳と尻尾のある女性だった。

『も、もうだめ……』


何がなんだかさっぱり分からない。目眩もピークに達しその女性に倒れこんだ時、背後の障子が開き、名前を呼ばれた気がした。


その声を聴いて落ち着いたのか私は意識を失った。


動物がたくさんいること、動物がしゃべった事、突然ヒトが現れたこと出来事の一つ一つに驚いていたが、何よりも一番驚愕したのは彼の声が妙に懐かしいと感じたことだった。


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