刹那恋愛




私はただひたすらに走った


誰かのためにこんなに走るなんて、私にはないと思ってた




ハァハァハァ…


雪「健斗!…どこ!?」


健「帰れ!グッ…」



暗い倉庫にはいった私に聞こえてきたのは、

健斗の苦しそうな声と健斗を殴る音だった




雪「けん…と…?…どこに…ッ!?」

ガバッ

猛「雪菜。逢いたかった…」


不意に、後ろから現れた猛に抱き締められた



雪「猛?…やっ、放して…」

猛「ますます可愛くなったね、雪菜…。おいで」

猛に手を引かれながら暗い倉庫の中を歩いた




少し歩くと、小さくうずくまっている健斗がみえた

傷だらけだった


すごく痛々しい姿だった



雪「猛…酷いよ…。なんで…」

猛「酷い?…そうかな。僕はただ、雪菜に付きまとうコイツが許せなかっただけ」

雪「付きまとう?健斗はそんなことしないっ!」



ギュ


猛「雪菜は俺の…。」

雪「猛…。」



いつの日か、直也にこんなことを言われた

'猛はさ、寂しがり屋なんだ。愛情表現がヘタクソで、子供なんだよ。だから嫌いにならないでやって…猛のこと'




猛とは小さい時から一緒だった


だから、猛が寂しがり屋なのは知ってた



この歪んだ愛情表現も

激しい嫉妬も

強すぎる独占欲も




総ては寂しさからのこと




それを知ってる今、

猛の腕を振りほどくことはできない



.



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