放送部からお伝えします
「……頭冷やしてから話しな」


かなめの母親が言う言葉はもっともで、確かに俺達は静かだったけど、冷静なんて言える状態じゃなかった。

かなめの言動とかは、母親の遺伝なんじゃないかとこんな状況でも思ってしまうほど、困惑していた。



かなめの母親が部屋から出て行くと、今度は梨衣子の母親が入って来た。



「……梨衣子、帰るよ」



「……」


梨衣子はゆっくり頷いて、母親の後ろをついて行く。

俺も部屋を出ようと、梨衣子が閉めきれなかったドアノブに手をかけた。


ドアの隙間から見える梨衣子の背中は、上下に揺れていた。

必死に堪えている泣き声が耳に響く。


部屋から一歩出て振り返ると、かなめが背中を背けてうなだれている。

部屋の明かりでかなめの涙がよく分かる。









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