放送部からお伝えします
「梨衣子」


竜也がまた視線を移し、あたしを見る。

あたしは泣きそうな目で竜也を見上げた。



「今まで、よく頑張ったね」


そう言ってあたしの頭を撫でる。

なんでこんなに心地いいんだろう……。



「それと……」


竜也はそう続けて、枕の下から何か出した。


「あ……」


「ニット帽、ありがとう」


目の前にある、あたしが公園の花壇に置いた黒いニット帽。


それを持って微笑む竜也。

なんで竜也が今持ってるのかわからないけど、あたしがもう一生見れない光景だと思っていた。



「ん? ちょっと待って。黒って俺じゃない?」


今までプレゼントはずっと黒色だった草太が言う。


「今年から僕が黒だから。よろしくね」


「じゃあ俺はどうなるの!? 」


「ニット帽くらい自分で買ってよ。いつまでも貰えるわけないでしょ? ずうずうしいな……」


竜也は草太の慌てた様子に呆れている。


「あ、寝てた分のプレゼントよろしくね。僕はあげないけど」


「お前のほうがずうずうしい!!」


気づいたように言う竜也に、草太がすぐにツッコミをいれた。



「あたしも?」


「梨衣子はいいやー。いるだけで♪」


そう言って目を細めながら笑う。


「病室でのろけんなよ!!」


久しぶりなこの空間。

やっぱり竜也がいるだけで違う。

楽しくて、賑やかで、懐かしい。









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