放送部からお伝えします

「……竜也」



公園の入り口の横にある花壇。

何も植えられてない花壇の代わりに、花瓶が一つ。



……その中には、白い菊の花が一輪。



そこに、竜也がいるのを感じる。



あたしはその前にしゃがんで、袋から黒いニット帽を出した。


「……竜也、こういうの好きでしょ?」


竜也の白い肌に、よく合ってた。


「一応、もう秋だからね」


日がおちるの長いから、まだ夏みたい。


「プレゼントとかいつも緑色だったでしょ? その度に竜也、草太に交換って言って」


「でも、結局そのまんまで。草太も頑固だったよねぇ……」


竜也の少しムキになった顔が思い出されてくる。

がっかりした顔も、少しひがんだ口調も好きだった。



「……最後の一回くらい、かえればよかったのにね」



……でも、死んじゃうなんて誰も考えてなかったから……。



いつも、そばにいると思ってたんだ。






< 85 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop