放送部からお伝えします



今年の記念日、あたしは7時に公園に行った。


やっぱり誰もいなくて。



花瓶に手を添えながら、もう会うことのない恋人に話しかけていた。



「竜也……この前ね、川岸さん来たんだよ」


竜也に全く知らない川岸さんの話をしても、仕方ないのに。



「まだ事件追いかけてるんだって」



竜也はそれで幸せ?

あたしはイヤ。

無理に辛いことを思い出したくないし、アイツらにも思い出させたくない。



「――あれ? この菊どうしたの?」


返事がないのは当たり前。

もう慣れちゃった。


それより、前まで置いてなかった花瓶。

しかも菊の花が挿してある。


誰がやったのかな?


思い当たるのは竜也のお父さんと、あたしのパパママを含む近所の人達。

竜也の両親は、竜也が小さい頃に離婚したから、今はお父さんしか家にいない。


――アイツらも、持ってくるなら花以外のものだろうし。


誰であれ、2年経った今でも、竜也の死を悲しんでいる人はいるんだ。







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