お腹が空きました。

飴玉一つでなんでも言う事聞いちゃいそうです。







「…と、言うわけで、物陰に隠れたそのとき、その消えたと思ってた友達が警察引き連れて走ってきてくれたんですよ!!まさに救世主!勇者ですよ勇者!!」


「おうおうそれは良かったな。」


オーブンから熱々の鉄板を出しながら、杉崎はクッキーの焼き具合を見る。

完全に聞き流している。

ちょっと、聞いていますか?と顔を渋める紗耶に杉崎はうんうんと適当に相づちを打った。

どうやら今はアイスボックスクッキーの方が重要らしい。


「もー、杉崎さんにはどうでもいいんでしょうけどー…。」


ガクッとうなだれながら紗耶はカウンターに頬を引っ付けた。

個人的には大事件だったのに。

一週間経っても良く覚えている。

ついでに時間差で自分の“どうでもいい”という言葉にも、何故かズキンと凹んだ。

ほんのちょっとだけど。


そんな紗耶に杉崎は冷静に応えた。

「だってお前がここに居るって事は無事だったって事だろ?無事ならそれでいい。」


ふんっと微かに微笑みながら杉崎は新しい生地を鉄板に乗せて行く。


“無事ならそれでいい。”


さ、さいでこざいますか…、と紗耶は少し機嫌を直しながらテーブルを見つめた。


「…で?良い男は居たのか?」


不思議と少し引き攣りつつニヤリと笑う杉崎に、紗耶はうーんと唸る。

「それどころじゃなかったですからねー。どこの店も気合い入ってましたから。こちらもそれ相応の気合いを入れないと。」

「ぶっ、ハハ、、お前らしいな。」





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