お腹が空きました。
雰囲気のあるたれ目の男性が杉崎にもグラスをコトンと置いた。
「杉崎さんって、いつもどれぐらい飲むんですか?」
「お強いですよ。」
チラリと杉崎を確認しながらバーテンダーはニコリと応えた。
「酒好きだからなぁ。ノブが振るカクテルは美味いぞ。」
ぺこりと頭を下げ、ノブと呼ばれたバーテンダーは再度ニコリと笑った。
確かに美味しい。
紗耶は甘めのグラスを傾けながら頬を押さえる。
ちょこちょこおつまみを食べながら紗耶はなんだか幸せそうに微笑んだ。
今日、とっても楽しかった。
久しぶりに動物園にも行けたし、パンダソフトクリームも食べれたし。
こんな素敵なお店にも来られたし、何より、
隣で杉崎さんが楽しそうにしている。
私服でグラスを傾けながらニヤリと笑って人をからかうように喋る杉崎に、紗耶は改めて言った。
「杉崎さん。」
「あ?」
「今日はどうもありがとうございました。」
紗耶は微笑み、頭を下げる。
「とっても楽しかったです。」
そんな紗耶をじっと見つめて、杉崎はまたグラスに口を近付けた。
「そうか。なら良かった。」
杉崎はそっぽを向きながら
上がった口角をグラスで隠した。