お腹が空きました。
ぎゅっと抱きしめられながらも上の方から伝わってくる笑いの振動に、紗耶は力なく杉崎の胸に持たれた。
「最悪だ…。」
自分の腹を押さえ、紗耶は呟く。
「そういえば作るっつって作ってなかったな。ちょっと待ってろよ。」
ヒョイっと紗耶の体を離し、杉崎は何事もなかったかのようにキッチンへと向かった。
ぇえっ、
急になくなった体温に、紗耶は不思議と寂しくなる。
おいて行かれた子犬のような顔をしていると、杉崎がふと戻って来て、唇に軽くキスをした。
「食いもん作ってる間、お前風呂入って来い。好きなの自由に使っていいから。」
「…………はい。」
ぼっと顔を赤らめながら、紗耶は壊れた機械のようにギシギシとバスルームに移動した。
杉崎さんが、
杉崎さんが…、
「(甘すぎるーーーーっっ‼)」
紗耶はシャワーを浴びながら声に鳴らない声で叫んだ。