お腹が空きました。
なんなんですかと言葉にならない言葉を懸命に伝えようとする紗耶に、杉崎はぬっと首を出してたしなめる。
「ばーか。何こっち来てんだよ。」
「え、ええっ?だって杉崎さんがどこにも居ないから探しに…」
はぁぁ、と大きなため息を付き、杉崎は腕の力を弱めた。
ブヒッと鼻を軽く押され、紗耶はキョトンと杉崎を見つめる。
バチッとはじめて目があって、紗耶はやっと自覚した。
杉崎さんのベッド。
杉崎さんの腕の中。
目の前の薄い服を着ただけの厚い胸板。
のどぼとけ。
あご。
そして唇。
見た目以上に柔らかい感触を思い出し、紗耶はボッと顔を赤くしながら思わず下を向いた。
「…男が寝てるベッドに近付く意味、分かってんのか?」
ゆっくりそう囁かれて紗耶はおおいに慌てた。
「や、違うんです違うんですっ本当にどこ行ったんだろうって…っ」
「ダメだ。賭けはお前の負け。」
賭け?
なんの話だと紗耶は眉を曲げる。
杉崎はニヤリと口角を上げ、紗耶をぐいっと引き寄せてワザと耳元で囁いた。
「賭けてたんだよ。お前がタオルケットが用意されたソファをみて、そっちで寝るか、俺の所にくるか。ソファで寝れば今日はそのまま。俺の所に来たら…」
ぐるんと体勢を変えられて、紗耶はあっという間に杉崎に組み敷かれた。
「お望み通り喰ってやろうと思ってな。」