お腹が空きました。




なんか、幸せ。



…こんな安心感、実家を出て初めてかもしれない。

カサッと雑誌のページをめくる音。

布と布が微かに擦れる音。

ガコンと氷が落ちる冷蔵庫の音。


とくんとくんと脈打つ杉崎さんの心臓の音。


知らず知らずの内に、紗耶は杉崎にすり寄りながら瞳を閉じていた。











チュッとこめかみに感触を覚え、紗耶は瞳を閉じたまま眉を寄せる。


んん……、、




「…おい、よだれ娘。」



「……………。……………え?!」


よだれという単語にやっと回り始めた脳が反応する。

ガバッと体を起こし、慌てて口元を拭うと、すぐ後ろでクツクツと笑いを堪える杉崎の声がした。


ばっと後ろを振り返り、恥ずかしさで頬を染めながら紗耶は唸る。


杉崎は口角を上げながら楽しそうにソファから立ち上がった。


「さて、二度寝娘も起きた事だし、」

「え、私どれぐらい寝てました?」

「時計見てみろ。」


あごをくいっと動かして杉崎は壁の上の方にある時計をさした。


「え、私1時間半も寝てたんですか?!」

どれだけ居心地が良かったんだ。


9時過ぎをさす時計の針に、紗耶は衝撃を食らう。


うーん、と背伸びをする杉崎は改めて提案した。


「買い出し行くけど、お前も行くか?」



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