お腹が空きました。
杉崎さんの匂い。
「…おい。」
紗耶は腕にキュッと力を入れて杉崎の背中に頬を寄せる。
「紗耶、ちょ…」
もうちょっとだけ、と、紗耶は首をフルフルと振った。
「…よし、良く分かった。」
「え?」
なにかを悟ったように杉崎はクルリと正面を向き、いとも簡単に紗耶を抱き上げる。
「え、ええ?」
杉崎が歩く振動を感じ、紗耶が彼を見上げたその時、どさっとベッドに降ろされた。
弾むベッドの中、紗耶は焦りながら逆光の杉崎の顔を見上げる。
はむ、と綿あめでも食べるような今日初めてのキスをされ、紗耶は更に焦った。
「か、買い出し行くんじゃなかったんですか…っ?」
「ん?なんだ、誘ってたんじゃねーのか?」
ニヤリと腰に乗り上げられながら狼は笑う。
「ちち違いますっ!そんな意味じゃありませんーっ!」
組み敷かれたままジタバタする紗耶をみおろして杉崎は実に楽しそうに笑った。
「じゃあどんな意味だったんだよ。ただたんにキスでもねだってたのか?」
「ねだ…っ、そんなんじゃありませんってーっ!ただ、…好きだなぁって、、思っただけで……、、」
もごもごと喋りながら赤い顔を両手で隠す紗耶に、杉崎はピタリと動きを止める。
「……。」
「………?」
なんにも反応がなくなった杉崎を不審に思い、紗耶はそっと目を開いた。
「よし、歯ぁ食いしばれ。」
「なんで!」
ガーンとショックを受けながら紗耶は青くなる。
ヒエーッッ
ギュッと目をつぶって唇をキュッと閉める紗耶に、杉崎はコツンとおでことおでこをひっつけた。