お腹が空きました。
「…?」
「さて、俺に喰われる覚悟は出来たか?」
「えっと、あの…っ、わ…っっ」
そう甘く囁いて杉崎は紗耶の唇をペロリと舐める。
ど、ど、ど、どうしよう…っ
嫌じゃない、嫌じゃないけど心の準備というか、さっき気が付いたばかりというか、色々もろもろ処理というかっ!
あわわわわちょっと待ってちょっと待ってと紗耶がパニクっていると、天の助けとでもいうようなチャイムが部屋に響き渡った。
『ピーンポーン』
宅配便?
紗耶が助かったと安堵の表情をこぼすのと同時にフッと体が離れ、隙間が出来る。
体を起こした杉崎は、しばらくドアの方向を見て口をへの字にした後、渋い顔をしながら紗耶に言い放った。
「無視。こっちのが重要。」
「ダダダダメですよーーっ」
ヒエーッッと紗耶は慌てて杉崎の下から抜け出し、赤ずきんに出てくる狼みたいにガバッと覆い被さってきた杉崎をさらりと避けて玄関に走る。
来客を無視するという暴挙に出た意外と大人気ない杉崎に変わり、紗耶は玄関の鍵を開けた。
「ハーイ。」
「紗耶、開けんな!」
「え?」
クルリと紗耶が杉崎の方を振り返ると、
背中の方で聞き覚えのある明るい声が響く。
「杉崎ー、遊びにきちゃったよーって、、…紗耶ちゃん?」
目を丸くする牛野に、紗耶は氷のように固まり、杉崎は後ろの方で頭を抱えた。