お腹が空きました。






「へーー、ほーー、ふーん、なるほどねぇ。」


始終ニヤニヤしながらソファに座る牛野に、杉崎は苦虫を潰したような顔をしながらコーヒーを乱暴に出した。


「だから開けんなっつったのに。この馬鹿は連絡もしねぇで急に奇襲かけてくるからな。いっつもいっつも…っ」


「まぁ、怒んなってー。ほら、食料も持って来てんじゃん。」


ガサッとテーブルの上に置いた買い物袋の中には野菜やら生ハムやらビールやらがぎゅうぎゅうにつめこまれていて。

「作んのはどーせ俺じゃねぇか。」

「だって杉崎、キッチン入れてくれないだろ。」

「…牛野、あの大惨事忘れたのか…?」


青い顔をしながら杉崎は買い物袋を受け取り冷蔵庫にそれぞれしまいだす。


ハハハハと爽やかに笑う私服の牛野を見て、ソファの隅っこに座っていた紗耶は遠慮がちに尋ねた。


「あの、牛野さんって、よく来られるんですか?」

「ん、そうだね。金曜日以外は結構ランダムに遊びに来てるよ。あいつの料理美味いしねー、って知ってるか。」

意味深に目配せをして牛野が下世話に微笑む。


「ね、ね、ところでいつからそういう事になっちゃってたの?紗耶ちゃんこっそりお兄さんに教えてくれない?あの頑固じじぃ絶対教えてくれないからさ。」

こそこそと顔を近付けて内緒ばなしをする笑顔の牛野にキッチンから怒鳴り声が飛んで来た。


「聞こえてんぞこの万年種牛野郎!誰が頑固じじぃだ!」



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