お腹が空きました。
ジュワーッと豪快に油が跳ね上がる音と共に部屋中が芳ばしい香りに包まれる。
少し頬が緩みながらも紗耶はTV画面に並ぶ録画された番組名をなんとなく眺めた。
料理番組、料理番組、食べ歩き番組、料理番組…
わーー、流石杉崎さーん……。と紗耶は遠い目をする。
牛野がクスクスとウケながら画面をスクロールした。
「ね、杉崎は相変わらずでしょ?」
「そうですね。」
相づちを打ちながら、ふと、大量の料理番組の間に“フランス語講座”という欄を発見。
フランス?と首を捻る紗耶に、牛野が少し小さい声で聞いてきた。
「紗耶ちゃんてさ、」
「え、はい。」
「杉崎が色々してる時に特に手伝おうとかしないよね。」
「あー、そうですねー。」
急に怒られたような気分になり、紗耶は少し首をすぼめて小さくなる。
「あ、違う違う、そういう意味じゃなくてさ、良く知ってるねって事。」
「?」
首を傾げる紗耶に、牛野は苦笑いしてかろうじてあったバラエティ番組を再生した。
アッハッハッハと響くTVの前で牛野は杉崎には聞こえない程度の声で囁く。
「途中で聞きたくなくなったら遠慮なく言ってね。俺もそれ以上は話さないからさ。…杉崎ってさ、なんでも出来んじゃん。」
「そうですね。」
紗耶は牛野の意図が見えず曖昧に頷いた。