お腹が空きました。
カチャ カチャン
二人並んで食器を洗う。
泡立ったスポンジを持ちながら紗耶はチラリと杉崎の手元を見た。
腕まくりされた逞しい腕がピカピカに皿をすすいでいく。
「…なんだ?」
上から降ってきた杉崎の低い声に紗耶は顔を上げた。
「いっいえ…っ」
筋肉質な腕にちょっとだけ見惚れてたなんて言えない。
「杉崎さん…、あの、」
「ん?」
「付き合って、る…んですよね、」
カチャン と食器が擦れ合う。
「そーだな。」
「ですよねっ、ですよね…!」
わしゃわしゃと泡を多めに立てて紗耶は背筋を伸ばした。
「なんだ?嫌なのか?」
杉崎は余裕の笑みを口元に浮かべながら、最後の一枚を食器カゴに上げる。
「いやっ、全然っ!全然嫌じゃな…、」
タオルで手を拭いた後、杉崎はスルリと紗耶の腰に両腕を絡めた。
ドクンっドクンっ
背中に杉崎の温みを感じながら、紗耶は耳に心臓でも付いているかのように大音量でその音が聴こえた。
「もし、本当に嫌だったら…、早めに言うんだな。」
頬に柔らかく息がかかり、杉崎の髪が首をくすぐる。
「じゃないと、俺、だんだんブレーキかかりにくくなるタチだから。」
ニヤリと、そう耳元で囁いて。
カチカチに固まった紗耶は、杉崎の唇が首筋に触れた途端、ビクッと肩を震わせた。