お腹が空きました。
そこにはいつも通りの雰囲気の、いつも通りの杉崎が居て。
一切顔に出さない杉崎を遠くから眺め、紗耶は不思議な気分になった。
「(私、あの人と付き合ってるんだよね…。)」
◆
「うーーん…」
「紗耶、どしたの?」
かれこれ本当に付き合っているのか分からなくなってきた木曜日。
前からそんなにメールがマメな人ではなかったが、果たして付き合いたての彼女に一通も送らないなんて事があるのだろうか。
由美と社員食堂でコロッケ定食をつつきながら紗耶はぼんやりと携帯を見た。
「(まぁ私も送ってないけどねー。)」
ぼへー、とアホ面をしながら紗耶は頭を掻く。
だってなんか改めるとこっぱずかしいしなぁ。
そもそも今までがこんな感じだったから、いきなり変えるのも…
「また変な感じするしなぁ…。」
「あ、紗耶、携帯鳴ってる。」
由美が指差す、机の上に置いた携帯を紗耶はもう一度手にとった。
「あ、まただ。」
ピタリと止まったバイブに、紗耶は首をかしげる。
由美は不思議そうに紗耶の携帯を覗き込んだ。
「かけ直さないの?」
「んー、でも知らない番号なんだよね。会社関係で携帯は使わないし、私、登録した番号はめったに消さないし…、主要な人は大概登録してるしなぁ。だからちょっと出るの躊躇ってる。」
「…あんた、しっかりしてるのかしてないのか、よくわかんないわね。」