お腹が空きました。
ぺこりと頭を下げる紗耶に、すっかりいつものムスッとした顔に戻ってしまった杉崎は上司らしく釘を刺す。
「明日はちゃんと気合い入れて仕事しろよ。」
「はーい!」
扉に向かいながら紗耶はニッコリ笑った。
「…おい。」
「へ?」
ドアノブに手をかけたまま、呼び止められた紗耶は首だけ後ろを振り返った。
偉そうに腕組みした杉崎が眉間にしわを寄せながら口を開く。
「口の軽そうなお前がもし黙っておけるなら、また、作ってやろうか。」
「…また、って、ケーキをですか?」
「そうだ。」
杉崎は眉間のしわをぐわっと更に寄せながら渋々答えた。
そんな杉崎に紗耶はぱぁっと顔を輝かせながら身体ごと彼に向き直って小さくガッツポーズを取る。
「えーーっ!ほんとですか?!うわっ!めちゃくちゃ嬉しい…っ!やったーっ!わーっ………あ。」
「…ん?なんだ?」
「あーーー…、やっぱダメです。」
すごくがっかりしながら紗耶は肩を落とした。