お腹が空きました。






「あんた最近楽しそうねぇ。」

休憩中、由美が小さなサンドイッチを頬張りながらのんびりと呟いた。

紗耶は大盛のラーメンをすすりながらキョトンと目を丸くする。

「そう?」

社員食堂の端のテーブルでハァ、とため息をつく由美の顔を紗耶はいぶかしげに覗き込んだ。

「由美ちゃん、彼氏と何かあったの?」

「…。」

うつむく由美に紗耶はコトンと箸を置く。

聞く態勢を取った紗耶に、由美は手を振った。

「いいよ、先食べな。麺伸びるよ。」

「大丈夫。もう食べたよ。」

「はっや!」

はんば呆れたように由美はひと息ついて、紗耶に喋り始める。

「なんかね、昔の女?再登場ジャジャーンみたいな、ね。」

「ぇえっ」

固まって口元を歪める紗耶に、由美はから笑いしながら椅子にもたれた。

「別にね?彼氏返してーとか言われた訳じゃないのよ。ただ、彼女ずっと今まで海外に行ってて…最近帰国して、ただ居るのよねーあいつのそばに。」

あいつ。

紗耶はいつぞやあったお兄さんを想像しながら由美をうかがい見る。

「向こうの方ががっつり幼馴染なのよ。本当の意味での幼馴染。私年下だし、家もそこまで近く無いし…。家も隣、年齢も一緒、あいつの家にぽっと居ても家族すら違和感覚えない間柄っていうか…もう別れてるって分かっててもねー…ちょっとキツイわ。」

紗耶は、テーブルになだれる由美の頭をゆっくりと撫でた。

「…。」

「チッ。奇襲かけてやろうかな。修仁に。」

「待て待て。…素直に言ってみたら?ちょっと不安になってるって。」

由美はぐでんとうつ伏せになり、泣きそうな声で言う。


「言えないよ。」

「なんで?」

「やっぱり向こうの方が大事なんて言われたら…立ち直れないじゃん。」


そういうと、由美はガバッと顔をあげ、モヤモヤを振り切るように髪をたくし上げた。





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