お腹が空きました。



「ここを、こうで、こうだっ!」


「こうですか?」

「ちげー。こうで、こうっ!」

「……。」

紗耶はげっそりしながら嬉々として窓を磨く杉崎を見上げる。





一通り作業が終わった後、紗耶は広いソファに力なくダイブした。


「疲れた…。」

なんか手伝います、と軽い気持ちで言ったが最後、みっちりレクチャーまで受けてしまった紗耶はぐったりとフカフカの生地に顔を埋める。

牛野さんが言ってたのはこれか、と紗耶はハハハと白目を向きながら笑った。

モフッ

ヘタレ込んでいたソファが弾み、頭の上に大きな手がフワリと置かれる。

「お疲れさん。」

「…こんな大みそかレベルの掃除、よくされるんですか?」

「大みそか?年末大掃除の事か?あんなの11月に終わらせる。」

「11月⁈」

「どこでもそうなんじゃねーの。」

そういうものなのか、と紗耶はカルチャーショックを受けながら杉崎に髪を好きにさせていた。

「杉崎さんってホント掃除好きですよねー。」


目をランランと輝かせてキュッキュキュッキュと磨き上げる先ほどの杉崎を思い出し、紗耶はクルリと身体をねじる。


仰向けになって、ゆったりと座っている杉崎を見上げると、彼はフッと笑い、穏やかに答えた。


「まぁそこそこな。」

「あ!杉崎さん杉崎さん、私何点でした?!掃除の出来栄え!」

「50点。」

えーっ!と紗耶はまた身体をねじり、杉崎の太ももに顎を乗せる。

「そこそこだ、そこそこ。」

「もう一声!」

「俺は正直者なんだよ。」

いっこうにオマケ点をくれない杉崎に紗耶は不満げな顔をしながらクルリと方向を変え、彼に足を向け、ぶぅとヘソを曲げた。

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